
形見分けとは?
形見分け(かたみわけ)とは、故人が生前に愛用していた品物やゆかりのある物を遺族や親しい人たちに分け与える風習・習慣のことを指します。 形見は死んだ人や別れた人を思い出すよりどころとなるもの、故人を思い出すものといった意味あいがあります。 「故人が所有していたものの総称」という意味で使われる遺品とは異なります。
形見分けの目的・意味
故人を偲ぶため
形見分けは、単に物を分配するという行為にとどまらず、遺族や親しかった人々が故人を思い返し、愛用品を通してその人の生前の姿を感じ取ることを目的としています。
思い出・意思の継承
故人がどんなものをどのように使っていたか、どんな思い入れを持っていたかを知ることで、遺された人々は故人の考え方や価値観を感じ取ることができます。 形見は物でありながら、そこに故人の生きた証や想いが宿るため、それを受け継ぐことで“生き方”や“精神”といったものが次の世代へ伝わることが期待されます。
供養の一環として
形見分けは、葬儀や法要などと同様に、日本の伝統的な供養のひとつと考えられています。仏教的には「執着を手放す」教えもありますが、形見分けを行うことで、身近な人が故人の思い出や遺品に触れ、日常生活の中で供養するきっかけともなります。
形見分けを行うタイミング
葬儀の直後に行う場合
葬儀直後に形見分けを行うこともありますが、気持ちの整理がつかないまま、慌ただしく進んでしまうこともあります。 そのため、近年ではやや落ち着いたころに形見分けを行うケースが増えています。
四十九日や一周忌などの法要後
四十九日や一周忌などの大きな法要が過ぎ、一段落してから形見分けを行うケースが一般的です。 気持ちを整理しやすくなり、誰にどの品物を譲るか冷静に考えられるという点で好まれています。
形見分けにおける注意点
遺産相続・財産分割との混同
高価な骨董品や宝石、土地や建物など、財産価値が大きい物は相続手続きの一部として扱われる場合があります。形見分けとして個人的な思い出の品を分けるのと、法律に基づいて相続を行うのとでは手続きが異なる場合があるので、必要に応じて専門家(弁護士や税理士)に相談すると安心です。
思い出の品すべてを手放す必要はない
遺族の中には、「全て形見分けしなければならない」と考える方もいますが、もちろんそうではありません。 大事な思い出が詰まった品や、どうしても手放したくない物を無理に人へ渡す必要はありません。
状態の確認・修理も視野に入れる
形見分けで贈る品物が壊れている場合、場合によっては修理修復する必要があります。 食器類や道具類でなどは、修理やクリーニングをして受け取る人に配慮することが大切です。
目上の人に贈るときは注意が必要
以前は立場や地位、年齢が上の人に形見を贈るのはマナー違反とされていました。 近年ではそこまで厳格ではなくなってきていますが、念のため、目上の方に形見分けする場合は、「ご無礼かもしれませんが」と、一言添えると良いでしょう。
まとめ
形見分けは、故人が生前に大切にしていた物を親族や友人に分け与え、その品を通して思い出や心を引き継ぐ大切な慣習です。 物理的な価値だけではなく、故人がそれをどのように使い、どんな思いを抱いていたかというエピソードこそが形見分けの要となります。 遺族や故人と親しかった人々が納得し、穏やかな気持ちで故人を偲べるよう、形見分けの時期や方法を慎重に考え、一つひとつの品を心をこめて受け渡ししていきたいものです。