
『ラスト・ソング』の内容
『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』は、米国認定音楽療法士の佐藤由美子氏が、アメリカのホスピスでの経験をもとに執筆したノンフィクション作品です。 本書には、ホスピスで1,200人以上の患者さんを看取ってきた佐藤氏が、音楽を通じて出会った10人の物語が収められています。 佐藤氏はアメリカに留学中「音楽療法」というものに出会います。
音楽療法
音楽療法とは、患者さんやそのご家族の心身の健康や回復の促進のために音楽を用いることです。 各エピソードは、患者さんとの思い出の曲を軸に展開され、“千の風になって”や“Love Me Tender”などの名曲とともに紡がれています。 例えば、度重なる脳卒中で言葉を失ったマイクが、愛する妻への想いを音楽で伝えようとする姿や、 ALSという難病に苦しみながらも「この病気に感謝している」と語るスティーブが、人生で最も大切なことに気づく様子など、感動的なエピソードが描かれています。 また、意識不明の患者さんにも聴覚は最後まで残るとされ、音楽療法が終末期ケアにおいて重要な役割を果たすことが紹介されています。 本書では、最初は音楽療法の効果に自信を持てなかった佐藤氏が、初めてその効果を体験したエピソードもつづられています。 音楽がもたらす癒しの力や、人間の尊厳について深く考えさせられる一冊です。
ホスピスとは
ホスピスとは、末期がんや進行性の難病など、治癒が困難な疾患を抱える患者さんが、人生の最終段階を穏やかに過ごすためのケアを提供する施設やサービスのことを指します。 ホスピスケアの主な目的は、患者さんの身体的な痛みや不快な症状を緩和し、精神的・社会的なサポートを行うことで、生活の質(QOL)を向上させることです。 具体的なケア内容としては、以下のようなものがあります: 身体的ケア:痛みのコントロールや、呼吸困難時の酸素吸入、食事や入浴、排泄などの日常生活の介助を行います。 精神的ケア:患者さんやご家族の不安やストレスを軽減するため、カウンセリングや心理的サポートを提供します。 社会的ケア:医療費や入院費の費用負担を減らす支援、相続や遺言のサポート、社会生活上必要な手続きの支援などを行います。 ホスピスケアは、病院内の緩和ケア病棟や、ホスピス専門の施設、在宅ホスピスなど、さまざまな場所で提供されています。 ホスピスの利用を検討する際は、患者さんとご家族の希望、病状、生活環境などを考慮し、医療ソーシャルワーカーやケアマネージャーと相談しながら適切なケアを選択することが重要です。
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パーソナルソング
『パーソナル・ソング』(原題:Alive Inside: A Story of Music and Memory)は、2014年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画です。 この作品は、ソーシャルワーカーのダン・コーエン氏が、認知症の高齢者に対して個人の思い出深い音楽を聴かせることで、彼らの心や記憶にどのような改善効果がもたらされるかを3年間にわたり追ったものです。 映画の中では、音楽が脳の広範な領域を刺激し、感情や記憶を呼び覚ます力があることが示されています。 例えば、ある認知症の高齢者が、子供の頃に親しんだ曲を聴くことで、以前は思い出せなかった過去の出来事を鮮明に語り始める様子が描かれています。 この映画は、2014年のサンダンス映画祭でドキュメンタリー部門の観客賞を受賞し、音楽療法の可能性や、認知症ケアにおける新しいアプローチとして注目を集めました。