冠婚葬祭の場では、主催者、喪主や遺族はもちろん、参列者にも守るべきマナーがあります。 特に葬儀という故人様との最後のお別れの場では、服装や持ち物、作法に至るまで、マナーを強く意識しないといけません。しかし、作法やルール・マナーは故人様の宗派によっても異なるため気を遣う必要があり、覚えるのが大変という方は多いはずです。 そこで今回は、葬儀に参列する際のマナーについて、宗派別に異なる作法やNG行為など注意すべき点を中心に、よくある疑問と共に重点的に解説します。ただでさえ悲しみの渦中にある遺族や近親者を戸惑わせることがないよう、いざという時に慌てない知識をつけておきましょう。
葬儀形式の種類
葬儀とは、亡くなられた故人様を偲び、お別れを告げるための儀式の総称をいいます。 葬儀は、遺族や近親者が故人様とお別れするための「葬儀式」と、その他の一般参列者が故人様との最後の時間を過ごすための「告別式」に大きく分かれますが、今では葬儀式と告別式は一連の流れとして行われています。 かつては前日の晩に「通夜式」を行うのが一般的でしたが、現在では葬儀の形式も多様化が進んでおり、葬儀の形式によっては通夜式を省略するなど、簡略なものもあります。 通常の、通夜式を1日目に行い2日目に葬儀・告別式を行う葬儀の形式は「一般葬」といい、2日間かけて葬送を行うことから「二日葬」とも呼ばれます。これに対して、通夜式を省略し、必要な儀式を1日ですべて行う形式の葬儀を「一日葬」と呼びます。なお、通夜だけでなく葬儀・告別式も省略し、火葬のみを行う「火葬式」「直葬」と呼ばれる形式もあります。 このように、葬儀の種類は、葬儀の形式で分かれるものだけでなく、参列者をどの範囲まで呼ぶかでも分かれます。通常の、一般参列者を幅広く招いて告別式を行う「一般葬」に対して、遺族近親者のみが参列して行う「家族葬」「密葬」も、新しいスタイルの葬式として近年増えています。また、葬式とは本来宗教行為ですが、名実ともに「無宗教」の人が増えつつある現代日本では、「お別れの会」「自由葬」など宗教に囚われない葬儀の形式も増えています。
葬儀の形式や種類については、こちらの記事もご参照ください。
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葬儀にはどんな種類がある?火葬式や家族葬、さまざまな葬儀形式を紹介します
宗教宗派ごとの作法の違いについて意識しよう
故人様を見送る葬儀は宗教行為であり、故人様が信仰している宗教に応じて、葬儀の形式や作法が異なります。 葬儀に参列することになったら、故人様の宗教宗派によって異なる作法についてあらかじめ調べておき、参列の際には作法の違いをしっかり意識しましょう。 宗教や宗派によって特に大きく違いが出てくるものとしては、葬儀時の拝礼・焼香の作法があります。 仏式では、基本的には拝礼の際、祭壇前で抹香を用いた焼香を行います。特に、仏式では宗派が多くあり、それによって拝礼や読経、数珠の持ち方の作法が細かく異なるため、注意が必要です。 神式では玉串奉奠(たまぐしほうてん)といって「玉串」と呼ばれる紙垂を下げた榊の枝を祭壇に奉納します。 また、キリスト教式では「献花」といい、用意された白い花を祭壇前に捧げる作法となっています。なお、キリスト教式でも焼香を行う場合がありますが、十字を切って焼香を行うなど、作法の違いがあります。
焼香の作法については、以下の記事も参照ください。
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お焼香の作法は?葬儀における基本的なマナーを解説いたします
葬儀に参列する際のNG行為とは
葬儀の際には、マナー違反にあたる行為や、「禁忌」とされるNG行為が色々あります。 平時とは異なる葬儀ならではのNG行為というのも多くあるので、葬儀に参列する際には、特に強く意識することが大切です。なお、宗教や宗派、地域によって異なる点にも注意が必要です。 ♦宗教宗派に関係なく共通するNG行為 香典(仏教)・御花料(キリスト教)・御玉串料(神道)に新札を使わない(亡くなることを見越して用意していたと思われるため) 忌み言葉(「再三」「重ね重ね」など不幸の連鎖を思わせるような言葉)を使わない 葬儀の最中に私語をする 亡くなった理由や経緯を根掘り葉掘り聞く ♦仏式葬儀のNG行為 通夜振る舞いを断る(主に首都圏では参列者全員に通夜振る舞いを供する習慣がある) 通夜振る舞いで長居する ♦キリスト教式葬儀のNG行為 数珠は仏具のため不要(キリスト教ではロザリオを持つ) お悔やみの言葉は避ける(キリスト教では死は不幸なことではないとされているため) 聖職者の入場時に起立しない(身体の不調や障害がある場合を除き、全員起立がマナー) ♦神式葬儀のNG行為 数珠は不要(数珠は仏具であるため 神式ではキリスト教式のロザリオのように数珠にあたるものが存在しない) 供え物として花・線香・蠟燭はもっていかない
家族葬のマナーについては以下の記事も参照ください
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【家族葬のマナー】親族、参列者がそれぞれ抑えるべきポイント
参列者としての葬儀マナーにおいてよくある疑問
葬儀の宗教宗派を問わず、参列する場合のマナーについては非常に気を遣うものです。 そうした時に、疑問に思うことや質問したいことが出てくるかもしれません。ここでは、参列者としての葬儀マナーについてのよくある疑問に答えていきます。
Q:子供と一緒に葬儀に参列する際、子供の服装はどうすればいいのでしょうか?
お子様の通う学校に制服があれば、学校指定の制服を着せましょう。 制服がない場合は、黒で統一した洋装での参列が一般的で、黒無地の服がない場合はなるべく地味で派手さのない洋服が理想です。喪服がない場合、無理に喪服を用意する必要はありません。
Q:友人の親の葬儀に参列する際、通夜と告別式どちらに出席すべきですか?
関係性にもよりますが、友人の親という多少距離がある関係の方の葬儀の場合は、通夜での弔問が一般的です。 現在の日本では、近しい関係ではない一般参列者の場合は、仕事終わりでも参列できる通夜への参加が一般的とされているためです。
Q:仕事帰りに通夜に参列する場合、服装はどうすればいいのでしょうか?
スーツでお仕事をされていて、仕事帰りにそのまま通夜に参列する場合は、スーツのままで参列して問題ありません。 ただし、弔意を示すため、ネクタイは黒いものを用意しておき、参列前に締め直したほうがいいでしょう。
まとめ
以上、参列者としての葬儀マナーについて、宗派別に異なる作法やNG行為なども含め解説しました。 ただでさえ故人様の遺族親族は悲しみに暮れる中、様々な手続きや手配をして葬儀の場を設けてくれています。参列者が香典を包むのは、そうした遺族親族の皆様への心遣い・気遣いや、故人様とのお別れの機会を設けていただいた御礼の意味も含まれているのです。 葬儀の参列の際は、遺族の皆様が「故人様との最後のお別れの機会を一般参列者に向けて用意してくださっている」という考えを忘れず、故人様の遺族親族に対して失礼にあたる作法や行為をしないよう、強く意識して参列しましょう。