ドライアイスは、二酸化炭素(CO₂)を固体化した物質で、冷却剤として広く利用されています。
温度
昇華温度は-78.5℃で、非常に低温です。
昇華
常圧では液体にならず、直接気体に変わる性質を持ちます。このため、溶けても液体が残らず床が濡れません。
「ドライ」という名前はここに由来し、水気が嫌われる環境での冷却手段として有効です。
冷却能力
同重量の氷の約2倍の冷却能力を持ちます。
食品の保冷輸送
アイスクリームや冷凍食品など、冷凍状態を維持したまま運びたい場合に利用されます。
舞台やイベントでの白煙演出
水に入れると白い霧状のガスが発生し、ステージやイベントの演出にも使われます。
工業分野での洗浄や金属処理
水を使わないクリーニング方法として、機械や設備の汚れを落とす際に重宝されます。
直接皮膚に触れると凍傷を引き起こすため、手袋を使用する必要があります。
気化した二酸化炭素は空気より重く、低い場所に溜まるため換気が重要です。
ドライアイスはその特性から日常生活や産業分野で幅広く活用されています。
葬儀社では、遺体の安置・保存を行う際にドライアイスを活用することが一般的です。具体的には以下のような理由やメリットがあります。
低温環境を維持
遺体は時間とともに腐敗や変色が進むため、適切な温度管理が必要です。
ドライアイスを遺体の周囲に配置することで、マイナス79℃前後の強力な冷却効果が得られ、腐敗の進行を抑えます。
亡くなってから4時間以内には冷却を始めなければならないとも言われています。
また、日本の法律では亡くなってから24時間以内に火葬を行ってはいけないため、葬儀までご遺体を保管するために、ドライアイスが使用されます。
衛生面の確保
細菌や微生物の増殖を抑え、衛生的な状態を保つ上で大きな役割を果たします。
水分が出ないため扱いやすい
通常の氷と異なり溶けて水が発生しないため、床や遺体付近が水浸しになる心配がありません。清潔かつ衛生的に管理できます。
ニオイを抑える効果
生前や死後に特有のニオイを低温で抑制し、遺族や参列者に負担をかけにくくします。
必要量の目安
季節や安置場所の気温、遺体の状態によって、適切な使用量や交換頻度が異なります。葬儀社では経験や実績にもとづき、その都度最適な量を判断します。
安全面の配慮
二酸化炭素ガスは空気より重いため床付近に溜まりやすく、密閉空間では濃度が高くなる恐れがあります。
ご遺体の腐敗防止を目的に使われるドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んで中毒死したとみられる事故が、2018年以降の5年間に少なくとも4件発生していることが分かっています。
そのため、ドライアイスの使用時には換気に注意する必要があります。
ドライアイスは、水分を出さず強力に冷却できる特性を持ち、食品保存から演出効果まで幅広く利用されています。
葬儀社においては主に遺体の安置・保存を目的として使用され、衛生的で安全な状態を保つための欠かせない手段となっています。
適切な使い方や安全管理を踏まえれば、葬儀の場面でご遺族や参列者に安心して過ごしてもらえる環境づくりに大きく貢献するでしょう。