人が亡くなると、その人は多くの人に労いと祈りの言葉を掛けられることになります。
そしてそのような言葉のひとつとして、「弔辞」があります。
ここでは、
♦弔辞とはそもそも何か
♦弔辞の基本的な書き方
♦弔辞に関するマナーと注意点
について解説していきます。
弔辞とは、亡くなった人を悼み、残された人が故人様に掛ける言葉をいいます。
お別れの言葉のうちのひとつではあるのですが、一般的な「挨拶」よりも長く語られるという特徴があります。
葬式の形式にもよりますが、弔辞は基本的には通夜あるいは葬儀告別式のときに読まれます。「弔辞の読み上げの時間」が設けられていて、スタッフによる「〇〇様より弔辞を賜ります」などのような案内を受けたら祭壇の前に歩み出て弔辞を読み上げる……というかたちをとるのが一般的です。
弔辞は、すべての葬式において「絶対に行われるもの」ではありません。弔辞をまったく読み上げない葬式もあります。葬儀会社によっても異なりますが、体感的には、弔辞を読まない葬式の方が多いように思われます。
ただ、交流関係が非常に広かったり、立場があったりする人の場合は、弔辞が読まれやすい傾向にあると感じます。
なお、弔辞は、1人だけが読み上げる場合もあれば、複数人が読み上げる場合もあります。
弔辞は、一般的には故人様のご家族からの依頼を受けて作るものです。また、故人様から生前に「おれの葬儀のときには、お前が弔辞を読んでくれ」と頼まれていたというケースもあるでしょう。ただし「お別れの言葉を告げたい」ということであれば、自分から申し出ても失礼にはあたらないと考えられています。
弔辞は、葬式のときにやり取りする言葉のなかでも特別な意味を持ちます。
葬式のときにやり取りする言葉にはある程度「定型文」があり、それから逸脱しないように選ぶのが普通です。
しかし弔辞の場合は、「残された人から、亡くなった人への手紙」という側面を持ちます。
弔辞を読むのは故人様と非常に親しかった人間となるため、そこには明確な「形式」は存在しません。語り掛けるような言葉を選んだり、敬語ではない言葉を選んだりすることも許容されています。
ただ、「まったく手がかりがない状態だと、何を書けばいいか分からない……」という人もいるでしょう。
そのような場合は、下記のように構成すると作りやすいといえます。
故人様の名前(ここだけはフルネームが分かりやすい)、呼びかけを行います。
驚きや悲しみを綴るのが一般的ですが、すなおな気持ちを綴ってしまっても問題ありません。訃報を受けたときのシチュエーションなどに言及しても構いません。
弔辞の中核を占めるのが、この「故人様のエピソード」です。
故人様とどんな風に付き合ってきたか、故人様の人柄はどうであったか、故人様との思い出で一番記憶に残っていることなどを書きます。なおこの場合、「読み手ならではの立場」からの内容にできれば一番よいでしょう。
たとえば、
♦中学時代の友人としての立場で弔辞を読むのならば、中学時代のエピソード
♦年齢や性別を超えて趣味の友達として長く付き合ってきたのであれば、その趣味にまつわるエピソード
♦会社の同僚として親しく緊密に長く働いていたのであれば、仕事にまつわるエピソード
を中心に構成します。
こうすると、残されたご家族も故人様の意外な一面を知ることができるでしょう。
今の気持ちをまとめつつ、今後どのようにその死を受け止めていくか、故人様の残したものをどのように引き継いでいくかを語り、最後にお別れの言葉で締めます。
ここで紹介したのは、あくまで「一例」です。すでに述べたように、弔辞はほかの「葬式での挨拶」とはまったく異なる性質を持つものであり、故人様に対する最後の手紙です。親しい人同士の間には、格式ばった、定型の言葉は必要ありません。下記で紹介するマナーを守っていさえすれば、順番や内容などは読み手側の自由に調整して構いません。
弔辞に関するマナー・注意点について解説していきます。
弔辞の長さに明確な決まりはありません。
なかにはかなり長い文章を読み上げる人もいます。ただ、1000文字程度がひとつの目安となるでしょう。これだとだいたい3分ほどで読み上げが終わります。
弔辞を読む場合、暗記する必要はありません。
弔辞を読む人は、多くの場合、紙に弔辞を書き込み、それを祭壇の前で開いて読み上げるかたちを取ります。
ただ、紙に書かれた文字をただ棒読みするよりも、祭壇に語り掛けるようにして話し始めるときれいに見えます。
だれが聞いてもほほえましく思うようなちょっとした失敗談や、若さゆえの未熟さを感じさせるエピソードは悪くないものです。
しかし故人様を貶める表現や、犯罪自慢(未成年者の飲酒喫煙など)は避けましょう。
♦「死亡・生きているとき」などのように生死を直接表現する言葉
♦「たびたび・くれぐれも」などのように同じ言葉を重ねる言葉
♦「離れる・切る」などの縁起の悪い言葉
♦「冥福を祈る(仏教)」「天国に行く(キリスト教)」などの宗教が限定される言葉
は使わないようにしましょう(※最後の「宗教が限定される言葉」は、該当宗教ならば問題ありません)。
長く付き合ってきた人との最後のやり取り、それが「弔辞」です。
弔辞は、亡き人を思い、亡き人との過去を思い、その人亡き後の未来を思って綴る言葉です。
弔辞を読むことになったのならば、あなただけの言葉で、故人様のために言葉を綴ってください。