葬儀の多様化が進む現代、最も簡素な葬儀として普及しつつあるのが「火葬式」です。
火葬式は火葬だけを行う非常にシンプルな葬儀ですが、シンプルすぎるが故に流れがどうなるのかわからない、どういったメリットがあるのか気になるという方も多いでしょう。
そこで今回は、火葬式の流れやメリット・デメリットにテーマを絞って解説していきます。僧侶を呼ぶ場合と無宗教の場合の違いについても解説するので、火葬式をどのようにあげるか迷っている方もぜひ参考にしてみてください。
火葬式は、最も簡略化された葬儀として、近年普及しつつある新たな葬儀の形式です。
たとえば同じ簡略化された葬儀の中でも「一日葬」では通夜式を省略しますが、火葬式の場合は通夜式に加えて葬儀・告別式すらも省略し、文字通り火葬のみを実施します。そのため、別名で「直葬」とも呼ばれています。
火葬式では火葬のみを行うため、流れもシンプルで無駄がありません。その分、寂しいと感じることも多いでしょうが、僧侶を呼ぶこともできますし、別途場所を借りて無宗教葬という形を取ることも可能です。
火葬式の流れは、非常にシンプルです。
火葬式は宗教的な儀式を伴わないため、場所の移動に関しても最小限で済みます。火葬式の流れは以下の通りです。
①臨終
②エンゼルケア~遺体搬送
③安置場所へ到着後、必要な処置を実施
④納棺の儀
⑤火葬する日当日に出棺
⑥火葬場で最後のお別れ
⑦火葬
⑧お骨上げ
火葬式の詳細な流れについては以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
火葬式は、あくまでも火葬だけを行う葬儀形式として設定されています。
宗教的な儀式を全て省いて行うため、無宗教の葬儀の代表的な存在といえるでしょう。
無宗教の火葬式の場合、僧侶などの宗教者がいないため、読経や焼香といったことを基本的には行いません。無宗教の火葬式では、読経や焼香の代わりに全員で黙祷を行い、喪主の簡単な挨拶を行なったのちに荼毘に付すという流れになります。
なお、無宗教の場合は宗教的儀式がない代わりに送り方も自由になります。火葬場ではスペースが狭く他の家族もいるため行えませんが、別途会場を借り切って故人様の好きな音楽を流したり、思い出の品々を展示したりなどのイベントを行ったのちに火葬をすることも可能です。そうしたスタイルの葬儀を「無宗教葬」と呼びます。
火葬式は通夜式や葬儀・告別式など一般的な宗教儀式を省いた葬儀のスタイルです。
とはいえ、必ずしも僧侶なしで行うわけではなく、希望があれば僧侶を呼ぶこともできます。
僧侶を呼ぶ場合の火葬式では、火葬炉の前の限られたスペースを使って、簡単にではありますが読経をあげてもらえます。スペースが許せば、簡易的な焼香設備を設置することもあり、正式な儀式はなくとも、ちゃんとした仏教式の送り方ができます。
僧侶を呼ぶ場合は、故人様の宗教宗派を確認して、故人様が信仰する宗教宗派の正式な作法に則ってお見送りをするようにしましょう。僧侶を呼ぶ場合でもスペースに限りがあることは変わりないので、参列者は家族親族のみ、あるいはごく親しい身内に限ることが多いです。
以上のように、葬儀の中でも一番簡略化されている火葬式ですが、シンプルであるが故のメリットも少なからずあります。
ここでは、火葬式の代表的なメリットを紹介していきます。
火葬式は、本来葬儀で行われる宗教的儀式の全てを省略した葬儀です。
そのため、斎場やセレモニーホールといった儀式を行うための会場を借りる必要もなければ、宗教者に払うお布施や儀式進行にかかる一切のお金も必要としないため、費用を大幅に軽減できます。
昔と違って家族それぞれが別々の地域に住んでいることも珍しくない昨今、葬儀の際に家族全員が何日も集まることは非常に面倒で大変な手間がかかることです。
いくら最後のお別れの場といっても、時間と日数を割いて長い期間集まることはご遺族にとって大きな負担となります。火葬式であれば安置期間も含め最短2日で終えられるため、遺族の負担が最小限で済むのです。
火葬式は火葬場で行われるため、参列者は家族かごく親しい親類や知人友人に限られます。
故人様やご遺族にとって身近な人しか参列しない上、受付応対なども物理的にできないので、応対の手間はほぼなく、こうした意味でもご遺族の負担が軽減できます。
火葬式では直系の家族親族やごく親しい身内のみで見送るので、香典返しなどの返礼品や食事会といったことも省略可能です。
そのため、そうした物を用意するためにかかる費用も抑えられ、非常に安価に葬儀をあげることができます。
上記のようにシンプルで無駄がないからこそのメリットで知られる火葬式ですが、相応のデメリットもあります。
代表的なデメリットは以下の通りです。
最も大きなデメリットは、先祖代々の菩提寺がある場合に、菩提寺が火葬式を認めない可能性があることです。
菩提寺の反対を押し切って火葬式を実施した場合、納骨を拒否されるなどトラブルに発展する可能性もあります。
火葬式は一切の宗教的儀式を行わない新たなスタイルの葬儀ですから、まだまだ一般に理解が進んでいるとはいえません。
そのあまりにシンプルな葬儀を「寂しい」とか「冒涜的である」と感じる方も少なからずいるため、家族や友人知人から火葬式への理解を得られない可能性があります。
火葬式は物理的にスペースが限られている関係上、ごく限られた近縁の方しか参列できません。
そのため、故人様の交友関係が広い場合、火葬式に参列できなかった方が弔問に訪れる可能性が高くなります。当日に応対の手間がない分、後になって自宅での弔問の手間が負担になってしまうことも考えられるのです。
以上、火葬式の流れやメリット・デメリット、僧侶を呼ぶ場合と無宗教の場合の火葬式の内容などを解説しました。
葬儀の多様化が進む中で、ご遺族の手間や費用負担を極限まで抑えられる火葬式ではありますが、その分後に手間が増えたり、菩提寺とトラブルになったりなどの難点もあります。
菩提寺に関しては事前に了解を取れば大丈夫であることが多いですが、無宗教で火葬をした場合先祖の墓には入れない場合が多いので注意しましょう。