お正月の話題として、昔から親しまれてきた「初夢」。
占いとして厳密に信じるというよりも、新しい一年の始まりに、自分の心の状態を映し出すものとして受け止める人が多いのではないでしょうか。
今回はそんな初夢について、深堀しつつ解説していきます。
初夢とは
初夢は、「その年の運勢を占うもの」として語られてきました。
一般的には1月1日から2日にかけて見る夢を初夢と言いますが、昔は旧暦の元日に見た夢を初夢と呼んだため、その名残で
「1月2日から3日の朝」「12月31日から1月1日の朝」「年を越して初めて見た夢」「三が日で見た夢の中で、最も縁起が良かった夢」など、さまざまな説があります。
初夢はなぜ大切なのか?
初夢が大切にされてきた理由は、「新年の最初」という特別なタイミングにあります。
年の始まりは、誰しも無意識のうちに未来へ意識が向く時期です。
夢は心の深い部分を映すものと考えられてきました。だからこそ、初夢は一年の方向性や、内に秘めた願いを象徴するものとして扱われてきたとされています。
定番の縁起物「一富士・二鷹・三茄子」
初夢と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「一富士・二鷹・三茄子」です。
最も縁起が良いとされる夢の代表で、それぞれに意味があります。
- 一富士
日本一高い山である富士山は、成功や達成、高い目標の象徴とされます。また、「不死」「無事」に通じるため縁起が良いとされています。
- 二鷹
鋭い爪で獲物を逃さないことや、高く上昇することから、出世運や勝負運の上昇を表します。
- 三茄子
「成す」という言葉に通じ、物事がうまく成就する、お金がたまるという縁起物です。
これらは江戸時代の庶民文化の中で、徳川家のゆかりの静岡県名物で、当時の茄子の値段の高さを表すために、静岡県にある高いものを引き合いに出したという説が有力です。
この説の場合、一般的に「二鷹」の「たか」は「愛鷹山」を指すとされます。
他にも下記のような説が由来とされています。
◆駿河の国の名産
富士山をはじめ、裾野に生息する鷹、名産である茄子を並べたという説。
◆徳川家康の好きなもの
徳川家康は、風景の中では富士山、趣味として鷹狩り、好物として初物の茄子を食べていたということから。
◆縁起の良いもの
前述したとおり、富士山は「不死」や「無事」、鷹は「高」「貴」、茄子は「成す」という意味があるため。
◆日本三大仇討ち
富士は、後に「曽我物語」と呼ばれる曽我兄弟の仇討ちを指し、この物語の舞台は富士の裾野の狩り場です。鷹は、「忠臣蔵」に出てくる浅野内匠頭の紋章である鷹の羽。茄子は、「鍵屋の辻の決闘」と呼ばれる荒木又右衛門の出身地、伊賀の名産品です。
◆江戸の駒込の特産品
駒込富士神社の近くに鷹匠屋敷があり、茄子は駒込エリアで収穫される特産品であることが由来という説。
実際、江戸時代には「駒込は 一富士二鷹三茄子」と詠まれた川柳もあったそうです。
四以降については諸説ありますが、一番有名なもので「四扇、五煙草、六座頭、七丁髷、八薔薇、九歌舞伎」と続く説があります。
富士と扇は末広がりのため子孫繁栄や商売繁盛を、鷹と煙草の煙は高いところに上がるため運気上昇、茄子と座頭は「毛が無い=怪我無い」ことから、家内安全を意味していると言われています。
※七以降は後々作られたものという説が有力です。
また、室町時代ごろからは七福神の「宝船の絵」に「なかきよの とおのねふりの みなめさめ…」という回文の和歌を書いた物を枕の下に入れると、縁起の良い夢を見ることができると信じられていました。
この和歌は、良いことがずっと起こるように、という意味が込められているそうです。
それでも悪い夢を見てしまった時は、翌朝宝船の絵を川に流し、縁起直しを行ったそうです。
昔も今も、初夢に縁起の良い夢を見たいという気持ちは変わらないものです。


