葬儀の場は、冠婚葬祭の様々な儀礼の中でも、特に厳粛かつ神聖な場所です。そのため、服装についても気を遣うのが一般的です。 葬儀に普段着で行く人はまずいないでしょうが、葬儀にふさわしい服装というのはどんなものなのか、あるいは服装は知っていても装身具や持ち物などは、特に初めて参加する場合にはわからないことも多いはずです。 そこで今回は、葬儀にふさわしい服装・装身具・持ち物などを、男女別に解説していきます。特に装身具については場所によっては盲点となりがちなので、万一の時に備えて葬儀にふさわしい装いを学びましょう。
葬儀にふさわしい服装については、あまり知らない方はいないかもしれませんが、ご遺族と参列者でふさわしい服装が若干違うということは覚えておいた方がいいでしょう。 基本的には遺族参列者共に、世間的に「喪服」あるいは「礼装」と称される、黒を基調としたフォーマルな服装ではあるのですが、遺族・参列者でどう違うのかを以下に詳しく見ていきましょう。
洋装・和装共にいわゆる「正式礼装」を着用します。 ♦洋装 男性…モーニングコート(ジャケット・ベストは黒、シャツは白無地でネクタイは黒無地、ズボンは細いストライプ入りの黒かグレーのスラックス) 女性…ブラックフォーマルドレス(黒無地かつ織模様や光沢のないシルクもしくはウール製のワンピース、あるいはスーツ) ♦和装 男性…紋付羽織袴(黒羽二重染め抜き五つ紋付、仙台平・博多平の袴、畳表付の草履) 女性…黒無地の染め抜き五つ紋付の着物、長襦袢や半襟は白、帯は黒の袋帯、帯〆や帯揚もすべて黒に統一、白足袋に黒い布製の草履
洋装・和装共にいわゆる「準礼装」「略式礼装」を着用し、ご遺族よりも格式が高くならないようにします。 ♦洋装 男性…ブラックスーツ(黒無地のシングルあるいはダブルのスーツ)あるいはダークスーツ(黒に限らずグレーや濃紺のスーツ)、シャツは白無地、ネクタイは黒無地を使用 女性…ブラックフォーマル(ブラックスーツもしくは黒のアンサンブル・ワンピース・パンツスーツも可) ♦和装 男性…黒に限らず、濃紺やグレーの着物に黒の紋付羽織を合わせる、袴は不要 女性…寒色で無地の一つ紋もしくは三つ紋の着物、あるいは小紋で目立たない長着物、長襦袢や半襟は白で、帯は黒無地、帯締めは黒の平打ち。足元は白足袋に布製の黒い草履
葬儀の際、判断を迷いやすいのが装身具やアクセサリーについてです。 葬儀においては「結婚指輪以外のアクセサリー類は外す」というマナーも一般的に知られていますが、葬儀の場で着けて良いとされる、葬儀に合った装身具というものもあります。 葬儀においてつけて良いとされている装身具は、真珠や黒曜石を原料としたアクセサリーです。たとえば、真珠の一連のネックレスや、黒曜石のイヤリング・ピアスなどが代表例で、他にも黒珊瑚やオニキス・べっ甲を使った装身具もOKとなります。ただし、二連以上のデザインのネックレスは「不幸の連鎖」を連想させるためにNGとなり、ぶら下げるタイプのピアスは華美な印象を与えるためNG となります。 男性の場合は、原則として結婚指輪以外の装身具は外すのがマナーです。ネクタイは黒無地のものを着用しますが、ネクタイピンはつけないようにします。また、革靴は金具のついていないものを選びましょう。腕時計も着用してかまいませんが、黒の革ベルトのついた針と文字盤で時間を読むアナログ時計を基本とし、ボディはシンプルなデザインのシルバーもしくはブラックのデザインのものが無難です。
葬儀の際の服装・持ち物のマナーについては、以下の記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀の際には、男女ともに最低限の持ち物のみを持ち込むのがマナーで、あまり大きなバッグや荷物はNGとなります。 また、葬儀ならではの持ち物もありますので、以下に葬儀の際の持ち物と、所持品別のマナーについてまとめました。
男性は基本的に必要なものはジャケットやスラックスのポケットに入れ、鞄・バッグは持たないのが一般的です。 とはいえ、必ずしもバッグを持ってはいけないというわけではなく、小さめのセカンドバッグなどかさばらないものであれば持っていっても大丈夫です。 女性は小さめのハンドバッグを持っていく方が多いですが、光沢のない黒生地のもので、あまり華美な模様や飾りのないものを選びましょう。これは男性の場合も同じです。
葬儀の際にご遺族に渡す香典は、現在では香典袋に現金を包んで渡すのが一般的です。 香典袋は中袋と外包みに分かれていますが、まずは中袋に現金(お札)を包み、中袋の表と裏に氏名・住所と金額を薄墨で書きます。その後中袋を外包みで包んで完成となりますが、外包みには表書きと氏名を同じく薄墨で書いて、白黒結び切りの水引をつけておきましょう。 なお、宗教や宗派によって表書きは異なります。たとえば仏式では「御霊前」「御香典」が一般的ですが、キリスト教式では「御花料」、神式では「玉串料」となります。 香典を持参する際には、袱紗(ふくさ)と呼ばれる慶事や弔事専用の布で香典袋を包みます。近年では香典袋を入れやすいよう、折り畳みタイプのポケット構造になっている「金封袱紗」も販売されているので、そうした市販品を用いても構いません。
数珠は、元々は読経の数を数えるために用いられていましたが、現在では葬儀だけでなく弔問や法要といった様々な場面で用いられます。 なお、数珠は仏具なので、仏式の葬儀に参列する場合にのみ持っていきましょう。 キリスト教式の場合、数珠に相当するものとしてロザリオがありますが、持っていなければ無理に持っていく必要はありません。
葬儀自体というよりは、葬儀に向かう際や帰りに入用がある時のために財布も念のため持参しておきましょう。 ただし、財布は基本的に男性はポケットやセカンドバッグ、女性は小さめのバッグに入れておくべきものですので、バッグのサイズに合わせて出来る限り小さくかさばらないものを選びましょう。男性の場合はポケットに入れることも多いので、ポケットからはみ出てしまう可能性もある長財布ではなく、薄くてコンパクトな財布がベストです。
葬儀は故人様との最後のお別れの場です。 涙することも多いでしょうし、涙や鼻水を拭う際に手で行うのははしたないとされていますので、ハンカチやティッシュも持参しましょう。ハンカチは白あるいは黒の、模様や柄が地味なものを選びましょう。できれば無地のものが理想で、ラメや派手な刺繍が入ったものはNGです。ティッシュは白いポケットティッシュが無難ですが、広告が入っている場合は取り除いておきましょう。
葬儀は雨天中止や順延などは当然ありませんし、ずぶ濡れで参列するわけにもいきませんから、雨の場合や雨が降りそうな場合は傘も持参しましょう。 傘は黒やグレーなど地味な色合いのものを選ぶのがマナー。あるいは、透明なビニール傘でも大丈夫です。
葬儀の際の対応のマナーについては以下の記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
以上、葬儀にふさわしい服装や装身具、持ち物や、守るべきマナーについて解説しました。 葬儀は故人様との最後のお別れの場であり、人によって程度は違うものの、悲しみを分かち合う場でもあります。 厳粛で静謐な儀礼の場としてふさわしい服装やマナーはしっかりと意識しましょう。