「不祝儀(香典)」は、葬儀の席において出される金銭です。この不祝儀(香典)に注目し、ここでは、
♦そもそも香典とは何か
♦家族葬でも不祝儀(香典)は必要か?
♦祖母が亡くなった場合、孫は不祝儀(香典)を出す必要があるのか? 出す場合はその相場は?
♦不祝儀(香典)の渡し方のマナー
について解説していきます。
ぜひ最後までご一読ください。
「香典」とは、葬儀の席においてお渡しすることになる金銭です。
かつて香典は、その文字通り、「お香」というかたちで出されていました。当時のお香はご遺体を獣から守ったり、強い死臭を紛らわせたりするという実利的な意味を持つものでした。
しかし今ほどお香の品質が高くなくかつ安価でもなかったため、必要となる大量のお香をみんなで持ち寄ろう……という考えのもと、「香典」が生まれてきたのです。
つまり、香典は相互扶助の精神から出されるようになったものだといえます。
現在のお香は非常に長持ちしますし、「獣から守る」「死臭を紛らわす」などのような理由でお香が炊かれることはほとんどありません。
しかし相互扶助の精神は残っているため、「金銭」というかたちで香典が渡されるようになったのです。
なお、厳密には「香典」は仏教用語です。そのため、キリスト教の葬儀などでは「香典」という言い方は使いません。
こちらでも、これ以降は、特筆すべき事情がない限りは「不祝儀」という表記をしていきます。
ご家族やご親族、あるいは故人様やご家族と極めて親しい人だけを呼んで行う「家族葬」は、感染症防止の観点から、現在非常に多くの人に注目されている葬儀のかたちです。
この家族葬でも不祝儀(香典)は必要なのでしょうか。
結論から言えば、「必要になることもあれば、必要ではないこともある」となります。
家族葬であっても、ご家族が特段「不祝儀辞退」の意向を示されていないのであれば、持っていくべきです。
ただ家族葬の場合は、一般的な葬儀に比べて「不祝儀辞退」とされるご家族が多いのは事実ですので、「不祝儀辞退の意向が特に示されていなかったので持って行ったが、固辞されてしまった」という場合は、無理に押し付けることはやめましょう。
このようなことを踏まえれば、家族葬においての不祝儀の扱いは、「遺族が辞退の意向を前もって示していれば持っていかない、そうでない場合は持参するが断られたら引き下げるもの」と考えてよいでしょう。
不祝儀の出し方は、「相手との関係性」によって異なります。
ここでは「祖母の葬儀」を例に取り、孫の立場から不祝儀をとらえていきましょう。
基本的には祖母の葬儀であっても、孫は不祝儀を持っていく必要があります。
ただし、
♦自分自身が10代(特に学生)である
♦一緒の家に住んでいた
♦不祝儀辞退の意向が示されている
という場合には、不祝儀を持参する必要はありません。
まだ幼く(あるいは若く)、自分の財布から不祝儀を渡せる状態でなければ、基本的には自分の名前で不祝儀を渡すことはしません。
ただし、親が代わりに子ども(祖母から見たら孫)の名前で供花や供物を出すなどのやり方を取ることはあります。
また、意外に思われるかもしれませんが、孫がすでに働いている年齢であったとしても、一緒に住んでいた場合は不祝儀は必要としません。
なぜならこの場合は、基本的には同居家族である孫の親(祖母から見て子ども)が葬儀を行う喪家の立場になるからです。
この場合は、不祝儀は「渡す側」ではなく「受け取る側」になります。
加えて、上でも述べた通り、「そもそも不祝儀辞退の意向が示されている」という場合も、不祝儀を出すことは控えます。
「孫の立場のときに不祝儀を出すべきかどうか」については、年齢や状況によって異なるのです。
それでは、孫の立場で不祝儀を出す場合はいくら程度包めばよいのでしょうか。
年齢によって異なりますが、「20代である」という場合は、10,000円程度が相場になるでしょう。
30代ならば10,000円~30,000円、40代以上であるならば30,000円~50,000円がひとつの相場となります。
ただ、不祝儀の額は「故人様との付き合いの深さ」「葬儀の後に会食を伴うかどうか」によって変わってきます。地域差もありますし、ご家族・ご親族の間の慣習もあるでしょう。
このため、「いくら包めばいいかわからない」と悩んだときには、同じ立場にあるほかの孫と情報交換をして、同じ金額で出すようにするのもよいでしょう。
不祝儀の表書きは、宗教によって異なります。
最初にも述べたように、「香典」という表記は仏教の葬儀のときに使う言い回しです。
仏教の場合は「御香奠」「御佛前」などのようにするとよいでしょう。
神道の場合は「御榊料」「御玉串料」などの表記がよく用いられます。
キリスト教の場合はプロテスタントならば「忌慰料」、カトリックならば「御ミサ料」という言い回しが取られますが、確証が持てない場合は「御花料」とするとよいでしょう。
孫の立場で不祝儀を渡す場合は、祖母の信仰していた宗教もわかるかと思われます。
そのため基本的には上記で挙げた「宗教による表書きの違い」に準じるべきですが、迷った場合は「御霊前」としましょう。これはどの宗教でも使える言い回しです(仏教の一部の宗派ではこの表記は使いませんが、問題になることはほとんどありません)。
不祝儀を渡す場所は、基本的には受付です。ふくさ(金品などを包む布)から取り出した不祝儀を渡して、芳名帳に名前を記しましょう。
しかし孫の立場なら直接喪主と話をする機会もありますし、家族葬の場合は受付がない場合もあります。その場合は、喪主と話をするときにお渡しすればよいでしょう。
香典の書き方・渡し方マナーや金額相場についてはこちらの記事もご参考にして下さい。
おくりびとのコラム
相互扶助の精神から生まれた「香典」の文化は、今も息づいています。
孫の立場で不祝儀(香典)を渡そうとする場合は一般参列者としての立場で渡す場合とはまた異なるやり方を取ることになりますが、その基本を押さえておけば迷うことはほとんどないでしょう。