通常、葬儀といえば葬儀前日に通夜を、葬儀当日に葬儀・告別式を行う「二日葬」が一般的です。
しかし、近年は時代背景の変化や新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、葬儀の形式は多様になりつつあります。
特に、故人様やご遺族の意向を汲み限られた儀式のみを行う「一日葬」のような簡略化した葬儀は人気となっており、その背景には費用を抑えられること、手間を減らせることなど合理的であることに注目している方が多いようです。
今回は、そうした一日葬に興味がある方のために、一日葬とはどんな葬儀形式で、どんな流れで行うのか、また気になる費用相場なども含めて徹底解説します。
「一日葬」とは、文字通り、葬儀における儀式をすべて1日で済ませる葬式のことです。
具体的に説明すれば、前夜の通夜式を省略し葬儀・告別式と火葬のみを行う、簡略化された葬式を指します。近年では、通常故人様の逝去から7日目に行う「初七日法要」もまとめて1日で行うことも多いです。(これを繰り上げ法要といいます)
今でも1日目の夜に通夜を、2日目に葬儀・告別式と火葬を行う通常の葬式、いわゆる「二日葬」が一般的です。しかし、近年は故人様の意向やご遺族の事情を鑑み「一日葬」のような簡略化した葬式も増加傾向にあり、特にコロナ禍以降は大人数で集まること自体が避けられていることから、参列者を集めない近親者のみの葬儀が好まれています。
従来の二日葬では負担が大きすぎる、かといって告別式を行わず火葬だけというのもあまりにも寂しい…そう考えるご遺族が増えている傾向から、通夜式だけを省略する一日葬が選ばれやすくなっているのです。
一日葬と通常の葬儀では、流れも違います。とはいえ基本的な流れが変則的であるわけではなく、本来すべき儀式の流れから省略できるものをカットして、1日に凝縮しているといった形です。
最も大きな違いは、本来1日目の夜に行われる「通夜」が丸ごと省略されていることです。また、火葬後の精進落としも一日葬では省略されることが多いですが、それ以外は、実は通常の葬式とはあまり変わりません。
簡単に箇条書きにすると、一日葬の流れは以下の通りです。
♦遺体搬送(安置)
♦葬儀内容の打ち合わせ
♦納棺の儀
♦葬儀と告別式
♦(繰り込み法要)
♦出棺 火葬
♦お骨上げ
♦(繰り上げ法要)
それぞれ、簡単に説明していきましょう。
まずは、故人様のご遺体を安置場所に搬送します。
搬送先の安置場所は、故人様のご自宅または葬儀会社の管理する斎場の安置施設などです。
一日葬と銘打ってはいますが、多くの場合、遺体搬送から火葬までは2日間と期間を置くのが通常となっています。ただちに葬儀や火葬を行わないのはご遺族や参列者が都合をつけられないというのも大きいですが、「(一部指定感染症での死亡を除き)遺体は24時間以内には火葬することができない」と法律で定められているためです。すぐに火葬はできない以上、少なくとも息を引き取った後24時間以上は、遺体を保存しておかないといけません。そのために安置が必要になるのです。また、遺体の防腐措置などもこのタイミングでおこないます。
遺体安置を終えたら、葬儀会社の担当者と葬儀内容の打ち合わせを行います。
葬儀の形式からはじまり、葬儀の日程や会場を決め、受付や僧侶など必要人員の手配、流れや費用面の確認や手続きなど、葬儀に際して必要なあらゆる物事について詳細に打ち合わせします。
一日葬でも、一般的には葬儀前日に納棺を行います。
前日に納棺を行うのは、火葬までに24時間以上の安置期間が必要なことや、一日葬当日に十分な儀式の時間をとれるなどメリットが大きいためです。
一日葬では通夜式を行ないませんが、近親者やご遺族は納棺の儀への参列や納棺後の故人様との面会も可能です。通夜を行わない分一般参列者もいませんから、故人様との最期の時間をゆっくり過ごせます。
ただし、当日の朝、葬儀・告別式の直前に納棺を行う場合もあります。当日の朝に納棺を行うことであまりゆっくりとした時間が取れなくなることもあり得ますのでスケジュールについてはよく確認をしましょう。
葬儀・告別式は、一日葬であっても流れとしては一般的な葬式と変わりません。葬儀・告別式に関しては、基本的には葬儀会社の司会者と僧侶が進行してくれますので、ご遺族は遺族席で故人様を見送ることとなります。
告別式が終わると、出棺~火葬の流れとなる点も、一般的な葬式と変わりありません。
出棺式が行われ、霊柩車に故人様のご遺体を乗せる前に喪主挨拶を行い、その後ご遺族や親族が中心となって棺を担ぎ霊柩車に乗せ、火葬場へ運ばれます。なお、北海道の一部地域では告別式の前に火葬を行う風習があるように、地域によって順番が前後することがあります。
近年では、一日葬でも一般的な葬式でも、告別式の後か火葬の後に初七日法要もまとめて行うのが一般的となっています。
現代では、家族親族が別々の地域に散り散りに生活拠点を持つことが多いため、初七日など葬儀と別の日に家族親族参列者が集まることが困難であることからこうした習慣が始まったと考えられています。
なお、葬儀当日に行う初七日法要は、告別式の後に行う場合は「繰り込み法要」、火葬の後に行う場合は「繰り上げ法要」と呼ばれます。なお、キリスト教式の葬儀では、同様の儀式として「追悼ミサ」や「記念式」がありますが、葬儀当日には行いません。
火葬が終わった後の「お骨上げ」については一日葬でも通常の葬儀同様に行います。お骨上げは「収骨」ともいい、火葬が終わってお骨だけになったご遺体から、ご遺骨を箸で拾い、骨壺に入れていく儀式のことです。
家族が二人一組になってご遺骨を箸で拾い上げる「箸渡し」という形式にのっとった形で行います。なお、キリスト教式では箸渡しは行わず家族が個別に箸を使ってご遺骨を骨壺に入れていく形式です。
一日葬の詳しい流れについては、こちらの記事をご参照ください。
おくりびとのコラム
以上のように一日葬とは、通夜や精進落としなど通常の葬儀で行う儀式を省略した葬儀ですが、費用面ではどのような感じなのでしょうか。
一日葬の一般的な葬儀費用の相場は、30万円~50万円と言われています。これに返礼品や食事代をプラスすると85万円程度が相場となります。※
結論から申し上げますと、平均的な相場としては通常の葬式よりも安くなるのが一般的です。しかし、安くなるのは参列者を限ることや、通夜振る舞いや精進落としなどの会食を行わないことが大きく関係しています。参列者を限ることによって広い斎場を借りなくてもよくなり会場費が安くなりますし、香典返しや会食にかかる費用も通常の葬儀よりは安くなります。
このように葬儀自体よりも参列者に対してかかる費用が安くできるのは確かですが、葬儀にかかる費用としてはあまり変わりがないというのが実情です。
※(2019年調査)一日葬の平均費用・相場のデータ https://ansinsougi.jp/p-221 より
一日葬と二日葬にかかる費用については、こちらの記事を参照ください。
おくりびとのコラム
既に説明した通り、一日葬は日数や儀式を限定し簡略化された葬儀を意味し、通常の葬儀(二日葬)との流れの違いがあることも既に述べた通りです。
しかし、葬儀は二日葬や一日葬だけでなく、他にも参列者の種別や儀式の内容などによって多様な形式があり、そうした葬儀の形式の違いによって細かな違いがあるため、どの形式で葬儀をするか迷う場合も多いでしょう。
そこで以下に、一日葬・家族葬・一般葬(二日葬)・直葬(火葬式)の違いを流れや費用などでまとめました。それぞれ、故人様の意向やご家族の都合に合わせて選ぶといいでしょう。
以上、一日葬とはどういう形式の葬儀で、どういった流れで行いどれくらいの費用がかかるのかを網羅的に解説しました。
葬儀は急に訪れる一方でやることが非常に多く集中してしまうことが多いため、昔と比べ遺族親族の数も減った昨今では、ご遺族の負担は相当なものです。
ご自身やご家族の最期について考えるきっかけにしていただき、よりよいお別れを実現できればと思います。