葬儀は、故人様の最後のお別れの場であり、故人様を亡くしたばかりのご遺族の悲しみも極まる非常に繊細な場です。
軽い気持ちで参列するような人もいないかと思いますが、葬儀はとりわけマナーが重要視される厳粛な場でもありますので、知識不足でマナー違反をしてしまったとしても、平常ではない場ですからご遺族の感情を逆なでする危険があります。
そのため、葬儀におけるマナーはできれば参列前にしっかりと確認し、学んでおかねばなりません。しかし、葬儀というのは特に若いうちはそう頻繁にあるものでもないですし、マナーについてよく知らず不安な方も多いでしょう。
そこで今回は、葬儀での服装や挨拶、香典を渡す際や焼香をする際の作法や、葬儀に参列できないときのマナーなど、葬儀のマナー全般を総ざらいしましょう。
葬儀の服装は基本的に宗教や宗派による違いはあまりありません。
ただし、キリスト教式の葬式で和装は不似合いかもしれませんので、基本的には洋装のブラックフォーマルであれば、どんな宗教の葬式であっても対応できます。ここでは、葬儀の服装マナーについておさらいしていきます。
男性も女性も、葬儀の際には喪主やご遺族が最も格式の高い「正喪服(正式礼装)」を着用します。
それに対して一般参列者は「準喪服」ないし「略喪服」を着用してご遺族より格式が高くならないように配慮します。男性も女性も、キリスト教式の葬儀以外では和装も着用しますが、男性の服装は以下のようなものがふさわしいとされています。
♦男性の喪服(洋装)
正喪服…モーニングコート(ジャケットとベストは黒、ズボンは黒かグレーの細いストライプが入った洋装)
準喪服…ブラックスーツ(黒無地のシングルまたはダブルのスーツ、シャツは白無地・ネクタイや革靴は黒無地で統一)
略喪服…ダークスーツ(黒・濃紺・グレーといった地味な色のスーツ)
♦男性の喪服(和装)
正喪服…紋付羽織袴(黒羽二重仕立て染め抜き五つ紋付と、仙台平・博多平の袴に畳表つきの草履)
略喪服…濃紺や黒、グレーの着物に黒の紋付羽織
女性も、洋装・和装ともに、ご遺族が正喪服を着て、一般参列者は準喪服や略喪服を着ます。
女性の場合はメイクも必要ですが、リップは透明ないし控えめな色を心がけ、メイクはナチュラルに色の少ないモノトーン寄りのナチュラルメイク程度にとどめましょう。ワンピースも可能ですが露出は最低限に、小物も黒で統一し地味なコーディネートで統一しましょう。アクセサリは真珠・オニキス・黒曜石などであればつけても構いません。
♦女性の喪服(洋装)
正喪服…シルクもしくはウールの光沢のない黒無地のワンピース あるいはブラックスーツ
準喪服…ブラックフォーマル(光沢のない黒無地のスーツもしくはワンピース・アンサンブル)
略喪服…濃紺やグレーのスーツ(パンツスーツも可能)やワンピース・アンサンブル
♦女性の喪服(和装)
正喪服…黒無地で染め抜き五つ紋付の着物(白の半襟・長襦袢、黒の袋帯または名古屋帯、帯締めは黒の平打ち)
略喪服…寒色系の無地、一つ紋または三つ紋をつけた地味な着物(白の半襟・長襦袢、帯締めは黒の平打ち、草履・ハンドバッグは布製の黒色のもの)
子供に関しては、子供用の喪服もありますが、あまり一般的ではありません。
子供は成長とともに体格が大きく変化するため、子供用の喪服をそろえるのは現実的ではないためです。そのため、服はあまり限定せず、地味目な色使いのものであれば大丈夫であることが多くなっています。たとえば、赤ちゃんであれば黒色の服は少ないのでベージュや紺色などの地味な色であればOKです。
なお、中学高校などで制服がある場合は、普段通学で使用している制服をそのまま着れば問題ありません。
ブラックフォーマルについて詳しくはこちらの記事も参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀では、葬儀の時にしか使わない挨拶や、葬儀の際だけに当てはまるマナーが存在します。
しかし、宗教や宗派によって言い回しが違ったりするので、使う際には慎重さが求められます。
挨拶はなるべく短く簡潔に、当たり障りのない言葉で終わらせるのが礼儀でもあります。口は禍の元というように、あまり余計なことをいうものではありません。間違っても、死因をきくなどの無粋な会話や、子供を亡くしたご家族に自分の子供の子育ての話を振るなどは避けましょう。
たとえば日本で最も多数派である仏教式の葬儀の場合では、「この度はご愁傷様でございます。心よりお悔やみを申し上げます」といった言葉が無難です。話したいことがあっても、あまり参列者側から余計な会話はしないようにするのがマナーというものです。
挨拶のマナーに関しては以下の記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀で焼香をあげる際にもマナーがあります。
しかし、これはこれまでの項目と比べると非常にシンプルです。特に告別式の際の焼香は長い列ができることも多いですが、あまり慌てずに列が適した長さになるまでは自分の席から立たず、おとなしく待っておきましょう。
細かい焼香の作法というものもありますが、基本はご遺族や前の方の作法を真似すればおおむね問題なく終わらせることができるでしょう。なお、焼香をあげた後は、ご遺族や喪主の席の方向に向かって黙礼を欠かさないよう注意しましょう。
お焼香の細かい作法に関しては、以下の記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
香典に関しては、事前に包んでおくものなので、葬儀前にしっかりと確認することができますので、最も失敗しにくいマナーといえるでしょう。
香典に関しては、おおむね以下のようなマナーを意識して守っていれば、特段問題は起きません。
♦香典に新札は使わない(新札の場合は折り目をつける)
♦香典袋は袱紗に入れる
♦香典袋の表書きは宗教宗派によって変える(「御霊前」「玉串料」「御花料」など)
♦香典袋を渡す際は両手で渡す
♦香典袋を包んでいた袱紗は、風呂敷型であればたたんで机に置く
♦金封袱紗であれば香典袋の下に敷いて渡す
香典のマナーに関して詳しくは、こちらの記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀のお知らせをご遺族から受け取った場合、参列ができる場合に関してはなるべく参列するのがマナーです。
しかし、やむを得ない事情で参列できない場合もあるでしょう。そうした場合にもマナーがあって、そうしたマナーを守れば角が立たずに済みます。
たとえば、参列できないことが分かった時点で即座に連絡を入れ、参列できない旨について理由を添えて説明し、欠席という無礼に対してお詫びの気持ちを伝えます。どうしても参列できないけれど弔意を伝えたい場合には、弔電を送るのがベストなマナーです。
しかし弔電も正式には略式にあたるので、後日正式に弔問にうかがう旨をメッセージとして添えると完璧です。弔電を送る際には葬儀が開始する前に届くように手配しましょう。
以上、葬儀に関するマナーについて、服装・挨拶・焼香・香典・参列できないときの連絡といった基本的なマナーを網羅的に解説しました。
特に葬儀はマナーを守ることが大切ですが、マナーを守るというよりは、タブーを侵さないという気持ちのほうが大事かもしれません。1つのミスがご遺族の感情に触れてしまう可能性もありますので、しっかりとマナーを学んで、スマートに弔意を示せるように意識しましょう。