日本では、仏教という宗教が多様な宗派に分かれており、その歴史も古く、さまざまな宗派が広まってきました。葬儀も宗派によって様々な違いがあります。この記事では仏教の宗派についての特徴と葬儀においてのマナーをご紹介します。
宗派は、主に仏教において歴史的な経緯から派生したグループを指します。
仏教自体は、釈迦が説いた教えです。しかし、釈迦が悟りを開いた後の40年間にわたる教えは非常に多岐にわたります。
その広範な教えは、さまざまな場所に広がり、それぞれが独自の宗派として成立していきました。そして、仏教であっても、宗派によって教えや信仰対象、経典や儀式の違いが生まれました。
現代でも、多くの方々が仏教の葬儀で宗派に応じた儀式を行っています。葬儀のマナーやスタイルは宗派によって異なるため、宗派の違いが感じられる要素の一つとなっています。
仏教が伝来し、宗派が派生した経緯について説明いたします。
仏教は最初、ブッダによってインドで開かれました。その後、時間の経過とともに、仏教は中国、朝鮮半島を経て、公的な記録では538年(一説に552年)に日本にも伝えられました。
当時の日本は主に神道が信仰されており、仏教は外来の宗教として拒否反応を示しました。その結果、物部氏と蘇我氏の間で争いが起きました。物部氏は神道を守護し、一方で蘇我氏は仏教を広めようとしました。最終的に蘇我氏が勝利し、日本において公式に仏教が認められたのです。
その後、鎌倉時代初期までに仏教は8つの宗派に分かれました。これらは三論宗、成実宗、倶舎宗、法相宗、華厳宗、律宗の南都六宗と、天台宗、真言宗です。
さらに、鎌倉時代に入ると、時代の背景を反映して新たな宗派が登場しました。法然による浄土宗、親鸞による浄土真宗、日蓮による日蓮宗、そして栄西や道元による禅宗系の臨済宗や曹洞宗などです。
そして、1940年に施行された宗教団体法以前には、法相宗、華厳宗、律宗、天台宗、真言宗、融通念仏宗、浄土宗、臨済宗、真宗、曹洞宗、日蓮宗、時宗、黄檗宗の13宗56派が公認され、現代に至るまで様々な宗派が形成されてきました。
同じ仏教であっても、13の宗派では葬儀の方法に違いがあります。
その理由は、各宗派が信仰する教えや「死」に対する考え方が異なるからです。以下では、主に「読経」と「作法・マナー」の2つの要素に焦点を当てて、その違いを説明します。
♦読経
宗派ごとの違いの一つは、経典の違いです。
各宗派は異なる経典を重視しています。それぞれの宗派が信仰する対象が異なるため、経典も異なるのです。
「南無」という言葉の後に続く部分で、宗派を判断することができます。例えば、「南無阿弥陀仏」は浄土宗や浄土真宗を示し、「南無妙法蓮華経」は日蓮宗を示し、「南無大師遍照金剛」は真言宗を示すといった例があります。
♦作法・マナー
ご葬儀では、各宗派で異なるマナーや作法が存在することがあります。代表的な例は、お焼香やお線香の扱い方です。
日本には13の宗派があります。
その中でも代表的なのは、「浄土宗」「浄土真宗」「真言宗」「天台宗」「臨済宗」「日蓮宗」「曹洞宗」の7つです。以下では、それぞれの宗派の開祖や総本山、そしてご葬儀における特徴やマナーについて説明します。
♦特徴
念仏一会(ねんぶついちえ)・・・参列者が「南無阿弥陀仏」を10回もしくは一定時間唱えます。この行為には、故人様の魂が極楽浄土へと導かれることを願う意味が込められています。
下炬引導(あこいんどう)・・・ 線香もしくは松明を1本持ちながら、円を描きながら「下炬引導(あこのげ)」と呼ばれる祈りを唱えます。
♦焼香
額に3回拝んでから、線香を点火し香炉に納めます。
♦線香
1本使用します。
♦特徴
末期の水がない・・・ この宗派では末期の水は使用されず、別の方法で水を扱います。
戒名ではなく法名が授けられる・・・戒名ではなく、法名が故人様に授けられます。
引導の作法がない・・・この宗派では引導に関する特別な作法は存在しません。
死装束を着せない・・・故人様には死装束を着せることはありません。
浄めの塩は用意しない・・・ 浄めの塩は使用されず、別の方法で浄めを行います。
♦焼香
額に拝むことなく1回行います。
♦線香
1本を折って寝かせるようにします。
♦特徴
灌頂(かんじょう)・・・故人様の頭に水をかける儀式で、仏の位に入れるようにという願いを込めて行われます。
土砂加持(どしゃかじ)・・・清めた土砂を護摩焚きで焼き、故人様のご遺体にかける儀式です。故人様の苦悩を取り除くために行われます。
♦焼香
額に3回推しいただきます。
♦線香
3本を三角形に立てます。
♦特徴
列讃(れっさん)・・・ シンバルなどの打楽器を鳴らして楽曲を奏でる儀式です。成仏するために仏となることを願い、行われます。
奠湯(てんとう)・奠茶(てんちゃ)・・・ お茶を供え、最後に茶器を供える儀式です。
♦焼香
額に3回いただきます。
♦線香
1本または3本です。3本の場合は手前に1本、奥に2本を立てます。
♦特徴
授戒(じゅかい)・・・故人様の魂を仏陀の弟子として受け入れるための儀式です。
引導・・・僧侶が「喝!」と声をかけることで、故人様の魂を極楽浄土へ導く儀式です。
♦焼香
額にはいただかずに1回行います。
♦線香
1本を立てます。
♦特徴
「南無妙法蓮華経」を繰り返し唱えることが特徴です。
♦焼香
額にはいただかず、1〜3回行います。
♦線香
1〜3本立てます。
♦特徴
「鼓鈸三通(くはつさんつう)」と呼ばれる儀式では、鐃祓(にょうはち)や鈴、打楽器を鳴らして故人様の魂を極楽浄土へ送ります。
♦焼香
最初の回は額にいただき、2回目は額にいただかずに行います。
♦線香
1本立てます。
仏教が日本に伝来してから宗派の系譜が成立するまでの経緯を簡単に説明しました。
現在では、13宗56派からさらに新興宗教などが派生し、仏教系だけでも多くの宗派が存在しています。
それに応じて、葬儀の方法や様式も宗派ごとに異なります。自身が所属する宗派やその様式について悩んでいる方も多いかもしれません。「おくりびとの葬式」ではご相談やお見積もりを承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
宗派の違いは、考え方や経典、戒名や葬儀の進め方などで現れます。
仏教式の葬儀でも、宗派が異なると、まず読経の違いに気づくことがあります。
宗派ごとの特徴やマナーを理解しておくと、葬儀に参列する際に役立ちます。しかし、それぞれの特徴やマナーの本質は、故人様のご冥福を心から祈る気持ちから生まれています。ですから、故人様を思う気持ちを持っていれば、少々のマナーの違いは問題はないでしょう。