新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、葬儀の世界までをも大きく変えたといわれています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前から「家族葬」という形態は注目されていましたが、この疫病が流行し始めたことによってさらに注目を集めるようになりました。
今回はこの「家族葬」のなかから、特に「だれを呼ぶのか」に焦点をあてて解説していきます。
家族葬とは、残されたご家族さまが声を掛けた人だけで行う葬儀をいいます。基本的には、故人様やご家族さまの近親者で行われることが多いものです。そのため、一部の特例を除き、家族葬は一般葬よりもずっと小さな葬儀となります。
なお、「家族葬」とよく似た響きを持つものとして「友人葬」があります。しかしこれは家族葬とはまったく異なるもので、創価学会の葬式を指す言葉です。
また、同じように似た言葉として「密葬」がありますが、こちらは、著名人などが亡くなった場合に行われるものです。後日に社葬やお別れの会を開くことを前提としたものであり、それに先駆けて、身内だけで葬儀を行うことをいいます。対して家族葬は、この「後日の葬送儀式」は行わないという違いがあります。
感染症防止の観点や、費用を抑えられるというメリットがあり、近年ニーズの増えてきた葬式のかたちが、この「家族葬」です。
上記でも述べたように、家族葬の場合、原則として「ご家族さまが声を掛けた人」しか参加できないという特徴があります。
家族葬の場合は新聞のおくやみ欄に訃報を出すことはありませんし、会社や学校への連絡も最小限に留めることになります(忌引き休暇を取る都合上最小限の人数には連絡をしなければなりませんが、その場合も「家族葬ですので」として弔問をお断りするのが普通です)。
このため、「この人には参加してほしい」という人に対しては、ご家族さまが手分けをして連絡していかなければなりません。
このときに「どこまで連絡をするか」は、ご家庭によって違います。そこには明確な決まりはありません。
ただ、大きなトラブルがあった場合を除き、
1.故人様のエンディングノートなどに、「この人には連絡をしてほしい」と書かれていた人
2.故人様の子どもや兄弟姉妹、親などの、極めて近しい繋がりのある人
3.故人様や家族が特に世話になっていた人
には連絡をするのが一般的です。
なお、故人様が「参列者は最小限にしてほしい」「参列者は自分の子どもたちまで」などのように希望していた場合は、その希望に添う方向で考えた方がよいかもしれません。
葬儀は、送る側のためのものであるのと同時に、送られる側のものでもあるからです。故人様の希望があったほとんどの場合では故人様のご意向に沿った葬儀が執り行われています。
「家族葬」という名前がついていることから、家族葬は「家族以外の人は参加してはいけないものなのだ」と誤解されてしまいがちです。
しかし実際の家族葬においては、まったく血がつながっていない人であっても、故人様やご家族様が親しくしていた人であれば呼ぶことができます。
たとえば、「故人様の50年来の友人」「大学卒業後も折につけて連絡をしあっていた恩師」「長く面倒をみてくれていた遠縁の親戚」などは、血縁関係がなくても(あるいは血縁関係が薄くても)呼ぶべき人だといえます。
また、「基本的には家族葬は一般葬よりもずっと小規模なものになる」としましたが、「非常に交流関係の広い人だった」というような場合は、「家族葬」であっても参列者が50人を超えることもあります。
このため、実際の家族葬においては規模や血縁関係にとらわれず、「故人様が最後に会いたいと願っていた人であったか(あるいは願っていたであろう人であったか)」を基準として選んだ方がよいでしょう。
なお、あなたが「声を掛けられる側」になった場合は、健康上の事情などがない限りは参列するように心がけると良いでしょう。家族葬であるにもかかわらず声を掛けられるということは、それだけ故人様やご家族様にとってあなたが特別な存在であるということだからです。
上記でも述べたように、「家族葬に呼ぶべき相手」には明確な線引きはありません。
「故人様の配偶者と子どもだけで行う、孫にあたる人や婿にあたる人も呼ばない」という家族葬もありますし、「3親等まで呼ぶ」という家族葬や「50人以上の友人に見送られる」という家族葬もあります。
ただ、どのような家族葬であっても、「どこまで呼ぶべきか」という問題が出てくることはあるかと思われます。
たとえば、「不仲で物別れしてしまって以来、30年も会っていない息子がいるが」「故人様は弟の子どもとはよく付き合っていたが、妹の子どもとは没交渉だった。弟の子どもの方には声を掛けるが、同じ立ち位置なのに付き合いがなかった妹の子どもの方はどうすべきか」などのような事例です。
ケースバイケースであるため、このような迷いに一概に答えを出すことはできません。
ただ、「迷ったのならば声を掛けてみる」という姿勢が、一番トラブルが少ないかたちであるかと思われます。
家族葬の性質上、「声が掛からなかった人」は葬式に参列することができません。そのため、「けんかはしていたが、最後のお別れくらいは言いたかった」「同じ立場の人は参列できたのに、私には声が掛からずさよならさえも言えなかった」という後悔や苦しみが生まれがちなのです。これらは、残されたご家族さまと呼ばれなかった側の軋轢を生むことにもつながります。
しかし声を掛けておけば、参列する・しないの判断は声を掛けられた側にゆだねられます。もちろん声を掛けられた側は原則として参列すべきであることはすでに述べた通りですが、断ることは可能です。そのため、「呼んだ・呼ばれなかった」に関わる感情的なもつれは非常に起きにくくなるでしょう。
家族葬という選択肢が一般化していったことで生まれたのが、「どこまで、どのような人に声を掛けるか」という問題です。一般葬の場合は広く参列者を受け入れるため参列者は自分の考えで足を運ぶことができますが、家族葬の場合は「原則としてご家族さまが声を掛けた人しか参列できない」という性質があるからです。
基本的には、
・故人様が希望していた人
・故人様や家族と近しい血縁関係にある人
・故人様や家族が特に世話になっていた人
に声を掛けるべきですが、故人様と仲良くしていた人などの場合は別個で声を掛けてもかまいません。
なお、声を掛けるべきかどうかで迷った場合は、とりあえず声を掛けておくとよいでしょう。
最後のお別れの場において、後々まで続く感情的な軋轢を生み出すことなど誰も望まないことでしょう。