葬儀は、人が亡くなられた時、故人様のご遺族が取り仕切って、故人様のこの世との最後の別れを行うための儀式です。
私たちにとって当たり前となっている葬儀ですが、葬儀に対する考え方は時代とともに変化してきています。そうした中で、そもそもどのようなもので、どのような流れでどのようなことをするものなのか、実はあまり知らないという方も増えているでしょう。
そこで今回は、葬儀とはそもそも何なのか、葬儀の流れはどのようなものなのかを改めて振り返っていきます。また、葬儀に会葬する場合と葬儀を出す場合でどのようなことをしなければならないかや、意識するべきマナーや持ち物も解説しますので、この記事を機に葬儀についての知識を総復習しておきましょう。
そもそも葬儀とは、人を弔うために行う祭儀のことです。
「弔う」とは、死者を悲しみ悼むことで、「悼む」とは、人の死を嘆き悲しむことをいいます。すなわち、人の死を悲しむ人々が、悲しみと向き合うために、あるいは悲しみに対して整理をつけるために行う儀式を意味します。
人の死というのは宗教に深く関わる出来事でもあります。宗教を信じる人にとって、いつか必ず発生する身近な人の死に対する悲しみに対して向き合い、心の整理をつけるために必要なのは「死後の救済を願う」ことです。葬儀の原点にはこうした考え方があります。
これは仏教でいうところの成仏や供養にあたる概念で、キリスト教でも死後の救済を説いていますが、亡くなられた故人様の死後の幸福を願うという意味ではどちらも同じで、それこそが葬儀における儀式の意義でもあります。
上記のような小難しい事はさておいて、現代風にざっくりと説明するとすれば、広義での葬儀は「ご遺族が故人様をあの世へ送るために執り行う儀式」の総称です。
つまり、葬儀というのは世間一般で言う「葬式」と同じように、遺体搬送から納棺・通夜式・告別式から火葬までの一連の流れそのものを総称として指す場合が多いです。
一般的に「葬儀」という場合、「葬儀・告別式」のことを指しますが、「葬儀」と「告別式」が違うものであるというのはご存知でしょうか。
よく誤解されていますが、「葬儀(正しくは葬儀式)」と「告別式」の2つは儀式としては全く違うものです。とはいえ、葬儀式と告別式は一連の流れで行われるため「葬儀・告別式」という名称になっているのであり、2つを同一視している方は多いでしょう。
「葬儀式」は「遺族が故人様とのお別れを行う」ことを目的として行われるのに対し、「告別式」は「一般の参列者が故人様とのお別れを行う」ことを目的としています。要は、葬儀式は遺族関係者向け、告別式は一般向けのお別れの儀式というふうに喩えればわかりやすいでしょうか。
誤解したままでも特段困る事はありませんが、一応違いを知っておくと、葬儀の際の心構えも変わるかもしれません。
その他、葬儀と通夜の違い、葬儀と告別式との違いの詳細については以下の記事を参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀の流れは、葬儀の形式によって細かく変わりますが、一般的な葬儀(二日葬)の場合には、概ね以下のような流れで葬儀が進みます。
1日目
①遺体搬送と安置
②葬儀の打ち合わせ
③親族への連絡
④納棺の儀
⑤通夜(通夜式)
⑥通夜振る舞い
2日目
①葬儀 告別式
②出棺
③火葬
④お骨上げ
⑤繰り上げ法要(初七日)
⑥精進落とし
葬儀の流れについての詳細は、以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀を取り仕切る役目を担う人のことを「喪主」といいます。
喪主には葬儀の取り仕切りという大事な役目がありますが、その中でも色々なやるべきことがあります。ここでは、葬儀の喪主を務める際にしなければならないことを解説していきます。
葬儀前に喪主がするべきことは、葬儀に絶対に必要になる準備の根幹の部分です。たとえば、以下のようなことが挙げられます。
♦遺体搬送の手配
♦葬儀社の手配と打ち合わせ
♦菩提寺や教会など宗教者への連絡
♦親族や故人様の知人友人等への連絡
♦死亡届の提出と火葬許可証の受け取り(※)
♦会葬礼状や返礼品の手配(※)
(※は葬儀社で代行してもらえることが多い)
葬儀中には、喪主は葬儀の主宰として表に立ち、その役割を全うします。葬儀自体を取り仕切るわけですから、喪主は大変重要です。葬儀中は以下のようなことを行います。
♦葬儀の進行の確認
♦通夜式・通夜振る舞い・告別式・出棺式・精進落としでの喪主挨拶
葬儀後にも、葬儀の代表である喪主にはたくさんの仕事が待っています。たとえば、以下のようなことをしなければなりません。
♦葬儀の世話役から、受付事務等を引き継ぐ
♦世話役から引き継いだ香典や芳名帳をもとに香典返しの準備
♦参列者や菩提寺への挨拶回り
♦故人様に関する死後の手続き全般
♦お墓や仏壇などの準備
♦四十九日法要の準備
逆に、葬儀に参列する側、すなわち会葬する場合には何をするのでしょうか。簡単に言ってしまえば、やることはほぼ「故人様の棺の前で冥福を祈る」くらいのことしかありませんが、するべきこととして挙げるとするなら以下のようなことでしょう。
♦男女とも喪服を着て参列する
♦受付でお悔やみの言葉を述べる
♦芳名帳への記入
♦香典を持参し手渡しする
♦焼香をあげ静かに祈る
葬儀という場は「人の死に対する悲しみ」や「死を悼む気持ち」が非常に重要視される場となっています。そして、そうした感情を伴って死者を弔う態度として最も適切なのは、葬儀に関するマナーを守ることです。ここでは、葬儀におけるマナーと持ち物について簡単に解説します。
♦鞄・バッグ(嵩張らないもの)
♦財布(薄くて小さめのもの)
♦香典(袱紗に入れて持参する)
♦ハンカチやティッシュ
♦数珠(仏教)やロザリオ(キリスト教)
♦傘(地味な色あるいは透明のもの)
♦手袋(女性の場合)
♦替えのストッキング
♦喪服あるいはブラックフォーマルで参列する
♦女性のアクセサリーは真珠・黒曜石・オニキスのみ
♦香典を渡す際にお悔やみの言葉を述べる
♦香典を渡す際は袱紗から出し両手で渡す
♦香典に使うお札は旧札を使う(新札の場合は一度折り目をつける)
♦焼香の所作は宗教や宗派によって違うので周りに合わせる
葬儀のマナーについて詳しくは以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
今回は「葬儀とは」というそもそもの原点について立ち返ると同時に、葬儀の流れや葬儀を取り仕切る側・参列する側がするべきこと、葬儀のマナーや持ち物といったことを網羅的に解説しました。
葬儀は「死を悲しみ、悼むもの」という根底にある価値観を忘れないために、葬儀の意味を改めて振り返ってみましょう。また、弔いの気持ちを表すためにマナーを守る・するべきことをするということを徹底しましょう。
ご遺族の気持ちを最大限に尊重することこそ、葬儀を取り仕切る・葬儀に参列する全員がやるべきことです。正しいことを正しく行うために、今更聞けないさまざまな知識を改めて頭に入れておきましょう。